Happy Birthday




地上でミッションを終えた刹那とロックオンの二人がトレミーに戻って来たと聞いて、アレルヤは寝転んでいたベッドから身を起こした。
整備でも何でも良い。手伝えることがあるだろうか。
それに、ロックオンの顔も見たい。
そんなことを思いながら、扉を開けた瞬間。

目の前には、何時間か振りに見る、ロックオンその人の姿があった。
偶然、アレルヤの部屋を訪れようとしていたのだろう。
タイミング良く開いた扉に、彼も少し驚いたようだった。

「ロックオン、戻って来…」

彼を迎え入れる言葉を述べないうちに、ドン、と体が押され、アレルヤは部屋の中へと逆戻りした。

「……?」

何事かと顔を上げると、少しだけ、鮮やかな色の瞳と目が合った。
でも、それは本当に一瞬のことで、次の瞬間にはその綺麗な双眸がぼやけて、アレルヤの視界は塞がれた。
同時に、唇に触れる柔らかい感触。

「ん…っ、ん?」

ロックオンが深く唇を押し付けていることに気付くまで、数秒掛かった。
何を、と言おうとしても、声が出ない。
代わりに、緩く開いた唇を割って、ロックオンの舌先が侵入して来た。
彼からこんな風にするなんて、とても珍しい。
アレルヤは濃厚なキスに夢中になるよりも、何があったのか探る方に神経を集中した。
でも、考えても何も思い当たらない。
その内、舌先がアレルヤのものを絡め取って、キスはより深くなった。
ロックオンとこう言うことをするのは、とても心地良い。
彼が慣れているせいもあるのだろうか。
こんな風にされたら、きっと…並大抵の人は冷静でなんていられない。
自分もその一人だ。
彼の腰に腕を回して、側に引き寄せると、どくどくと鼓動が跳ね上がる。
溢れたお互いの唾液が甘い。
そうして…。やがては不審に思う気持ちなどどこかへ行ってしまって、アレルヤは目前にある心地良いものに夢中になった。

「油断大敵だな、アレルヤ」

ようやく唇を離したと思ったら、ロックオンは不敵な笑みを浮かべながらそんなことを言った。
でも、間近でこちらを覗き込む目はどこか子供っぽい。
アレルヤは痺れるようなキスの余韻に浸りながら、困ったように笑った。

「不意打ちなんて卑怯ですよ、ロックオン」
「卑怯ってことないだろ。お前の警戒が足りないんだ」
「警戒なんてしませんよ、あなた相手に。どうしたんですか?急に」

体を寄せ合ったままで訪ねると、ロックオンは急に不機嫌そうに眉を顰めた。

「どうしたもこうしたも、聞いたんだよ。お前、誕生日だったんだってな」
「え……」
「ミス・スメラギが言ったんだよ。お前も二十歳になったから、今度は三人で飲めるってな」
「そうだったんですか」

そう言うことか。守秘義務もなにも、あったものじゃない。
アルコールは、あの戦術予報士の口を殊更軽くさせるらしい。
まぁ、別に構わないか…。

アレルヤは思い直して、目の前にいる彼に向かって笑顔を作った。

「それで、駆け付けてくれたんですか。優しいですね、ロックオン」
「何言ってんだ、薄情な誰かさんに嫌味の一つでも言おうと思っただけだ」

姿を見せるなり、あんな行動を取ったくせに?
矛盾するロックオンの台詞に、アレルヤは苦い笑みを浮かべた。
でも、それよりも嬉しさが勝る。

「嫌味なら、後でちゃんと聞きます。でも…あなたの方こそ、隙だらけだ」

口元を綻ばせながら、逞しい二の腕を駆使して、抱き寄せた体をベッドに押し倒す。

「あ、おい!アレルヤ?」

上に圧し掛かると、ロックオンは焦って声を荒げた。

「ま、待てよ。おめでとうぐらい、言わせろって」
「大丈夫ですよ。今、聞いた」
「アレルヤ!」

戸惑う声を無視して、四肢の自由を奪うと、アレルヤは再び彼の唇を強く塞いだ。