SS
地上に滞在中。
王留美が用意してくれた屋敷で、皆でミッション成功の祝杯を上げていた。
皆いつもより少し打ち解けた感じに見える。ティエリアも、珍しく皆と一緒にいる。
そんな中、少し夜の空気に酔ってしまったのか。
具合が悪くなって、フェルトは一人でテラスに出た。
その、五分後くらいだろうか。
「どうした、具合でも悪いのか」
「ロックオン」
振り向くと、ロックオンが優しい笑顔を浮かべて立っていた。
「ううん、大丈夫」
「そっか。ならいいけど。また泣いてるのかと思ってさ」
「そんなこと」
「だよな、悪い」
そう言って、彼は何だか楽しそうに笑った。
気のせいかも知れないけど、いつもより少し陽気だ。お酒のせいだろうか。
少し、違う人みたいで、何だか怖いような。
フェルトの視線に気付くと、ロックオンはまたこちらを見て、首を傾げた。
「顔が…赤いぞ?酒なんか飲んでないだろ」
じっと見詰められて、思わず視線を伏せる。
「ちょっと、疲れて」
「そうか…」
優しい声。いつもと変わらないその声が聞こえた、直後。
つん、と頬に軽い感触がした。
(……?!)
びく、として目を上げると彼の指が頬に触れているのが見えた。
「ロックオン…」
「髪の毛と、同じ色だな」
はは、と軽く笑って、驚いているこちらに何かお構いなく、ロックオンはすぐ指を離した。
「じゃあな、ゆっくり涼んでな」
「う、ん」
何とか首を縦に振って頷いたけど、少し…びっくりしてしまった。
以前のこともそうだけど、あの人は人に触ることに抵抗がないみたいだ。
フェルトは、少し苦手だ。
でも。ロックオンは別かも知れない。彼に触れられるのは気持ちいい。
部屋に戻って行く大きな背中を見詰めながら。
さっきより頬が赤くなってしまったのを気付かれなくて良かったなと、フェルトはこっそり思った。
終
04.01