23話後。 シリアス。

SS




「フェルト、ゴメン!フェルト、ゴメン!」
「ハロが悪い訳じゃない、ハロが…いればこそ」

腕の中で何度も謝るハロに、フェルトは首を振った。
涙が、いつまで経っても止まらない。
嗚咽を上げる自分に、クリスティナが近付いて声を掛けてくれた。

「大丈夫?フェルト…。ここは大丈夫だから、モレノさんのとこに行って来ていいよ」
「クリスティナ…」
「落ち着くまで…ね?」

クリスティナの言葉に甘えて、フェルトはハロを抱いたままふらふらと通路に出た。
メディカルルームに向かっている途中も、涙が止まらない。
泣きじゃくるフェルトに気付いて、ハロが何度も呼び声を上げた。

「フェルト、フェルト」
「ハロ…どうしよう…ロックオンがいなかったら」

あの人がいなくなってしまったら…どうしたらいいのか。
もう…戦うなんて…。

今までは、泣くときだって寂しいときだって一人で大丈夫だった。
一人で耐えるのが当たり前になっていたから、平気だと思っていた。
でも、いつでも無条件で差し出される、温かくて優しい手を知ってしまった。
それが急になくなってしまって、どうしたらいいのか。
目の前が真っ暗になって、胸が痛くて苦しくて、どうしようもない。

「フェルト、フェルト」
「ハロ、もう…駄目だよ」

ハロを抱えたまま、フェルトは通路に蹲ってしまった。

いつもロックオンの姿を目で追い掛けていた。
広いトレミーの中で、あのブラウンの髪の毛が視界にちらつくと、ホッとした。
パパやママとは違う。でも、誰よりも安心出来る存在だった。
でも…もう。もう……。
ギュッと、ハロを抱く手に力を込めたそのとき。
突然、頭の中に声が聞こえた。

―きみは強い。強い女の子だ。

「……!!ロックオン!!」

耳によく馴染んだその声に、フェルトは顔を上げた。
零れ落ちた涙が、半重力の空間に舞う。
あのときと、同じ。今でも、鮮明に覚えている。
優しい手に頭を抱えられたことは、まるで昨日のことみたいに、フェルトの胸に焼き付いている。
生き残れって言ってくれた。約束したんだ。

「ごめんね、ハロ。皆のとこに戻ろう」

片手で涙を拭うと、フェルトはしっかりと立ち上がった。



すぐに戻って来た自分を見て、クリスティナは目を丸くした。

「フェルト!大丈夫なの?」

駆け寄って、気遣ってくれる彼女に、フェルトは力強く首を縦に振った。

「大丈夫。強い、から…」
「フェルト」
「まだ戦わなくちゃ」

―そうだよね、ロックオン…。




04.05