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 食堂に着くと、皆で刹那を真ん中にして囲むように席に着いた。
 そうして、それぞれ用意されたケーキを食べたり酒やジュースを飲んだりして盛り上がり、一通り騒いだ後に、ミレイナが立ち上がって声を張り上げた。
「セイエイさんにプレゼントがあるです!パーファシーさんと合同です!」
 そう言って、彼女は綺麗にラッピングされた袋を刹那に手渡した。
「ありがとう、ミレイナ、マリー・パーファシー」
「喜んで頂けると、嬉しいです」
 刹那は少し戸惑っているように見えたけれど、でも、何だか嬉しそうだ。
(プレゼントか……)
 沙慈は、用意していない。刹那の欲しいものなんて、解からなかったし、解かったからって、自分で用意出来るような立場にいない。だから、刹那にはあんなことしか言えなかった。何か、欲しいものがあるか、だなんて。沙慈が自由の利かない身だと知っているから、逆に気を使わせたかも知れない。
 そんなことを思っていたら、続いて聞こえて来たミレイナの言葉に、沙慈は自分の耳を疑った。
「クロスロードさんの寝顔写真、三枚セットです!」
「……は?」
「ミレイナ、よくやった」
「はいです!赤ハロに言って、撮らせて貰ったです」
「え、ちょ、ちょっと待っ、それって盗撮……」
「刹那、私からも、これ……」
 沙慈の抗議を遮るように、今度はフェルトが立ち上がって、刹那にプレゼントを手渡した。
「ちょ、ちょっと、今、なんて……」
 沙慈はまだ目を白黒させていたけれど、皆の反応は薄い。
(もしかして、聞き間違い?)
 そうだ、そうに違いない。
 無理矢理自分を納得させて、沙慈は心を落ち着けようとしたけれど、続くフェルトの言葉にまた呆然としてしまった。
「私からは、沙慈の恋愛シミュレーションゲーム。徹夜で作ったんだけど、刹那に、受け取って欲しくて」
「…………?」
「フェルト、ありがとう」
「頑張って攻略してね、刹那」
「ああ……」
(ありがとう……って、え……、ゲームって?)
 何の?どんな?
 沙慈の頭には盛大に疑問符が浮かんだけれど、目の前の状況が変わる訳ではない。今度はスメラギが笑顔を作って、得意げにカードらしきものを差し出した。
「私なんてもっと凄いのよ。はい、刹那。クロスロードくんを一日好きに出来る券よ」
「スメラギ・李・ノリエガ。あんたは最高の戦術予報士だ」
(いやそれ、戦術じゃないし、関係ないし)
「ま、当然ね。頑張って、刹那」
「ああ、早速使わせて貰う」
 沙慈が胸中で暢気に突っ込みを入れている間に、刹那はスメラギの渡した券をぎゅっと握り締めると、突然くるりとこちらに向き直った。
「そう言う訳だ、沙慈」
「……え?」
「来い、沙慈」
「うわっ!」
 ぐい、と腕を引かれて椅子から引き摺り下ろされ、沙慈は慌ててもがいたけれど、びくともしない。
「ちょ、ちょっと待って!せ、刹那っ!」
 引き攣った沙慈の声を断絶するように、食堂の扉はシュンと音を立てて閉まった。



おわり