現代パラレル。義理の姉弟。
基本的にギャグ。
SS
「わたし、マリナ・イスマイール」
「刹那・F・セイエイ」
「ええ、知ってるわ。今日からよろしく、刹那」
そう言いながら、にっこり笑って手を差し出したのだけど。
見事なまでにスルーされてしまったのは、昨日のことだ。
「シーリン…。一体、わたしの何がいけなかったのかしら」
受話器を両手で持ちながら悲壮に訴えると、冷ややかな返事が返って来た。
「さぁ、年頃の男の子には色々あるんでしょう。いちいち気にしていても仕方ないわ」
「そ、そうよね。これでくじけちゃいけないわよね」
「でも、あなたも物好きね。身寄りがないからって、男の子を引き取るだなんて」
「ええ、でも。放っておけなくて」
「まぁ、理由はどうあれ、二人きりの姉弟になったという訳だもの。弱音なんか吐かずに頑張ることね」
「ありがとう、シーリン」
姉のように厳しく諭され、マリナは力強く頷いて電話を切った。
刹那・F・セイエイ。
両親がいなくなって、どこにも行くところがない彼を、マリナは弟として引き取ることにした。
自分も身寄りがないから、本当の家族みたいになれたらいいのに。
でも、刹那はとても無口で、すぐには心を許してくれそうもない。こうなったら、誠心誠意を込めて、本音をぶつけて解かり合うしかないだろう。
幸い、引き取ると伝えたときは、心なしか嬉しそうに見えた。
だから、大丈夫。
マリナは心を新たにして、夕食のとき刹那に呼び掛けた。
「ねぇ、刹那。ちょっと、話があるの」
「何だ」
刹那が無表情のまま、顔を上げる。でも、ちゃんと返事が返って来たことに安堵して、マリナは口元を綻ばせた。
大丈夫。ちゃんとカンペも用意してあるから、この通り伝えれば、きっと解かってくれる。
でも、何だか照れ臭くて、視線を逸らしながら口を開いた。
「その…昨日はちょっと緊張して、言い忘れてしまったのだけど…。わたしもずっと家族がいなくて…口にはしないけど、寂しい思いをしていたの。だから、あなたとは…上手くやっていけるんじゃないかと思って…。こんなこと言うのは、図々しいかも知れないけど、でも…本当にそう思っているの。刹那が来てくれて、本当に嬉しい。だから、刹那も……」
刹那も、そう思ってくれているといいな!
パッと顔を上げて、殊更明るくそう伝えようとしたのだけど。
「え……」
(あ、あら…?)
いつの間にか、刹那が座っていた椅子はもぬけの殻になっていた。
「そ、そんな…」
また失敗してしまったのか。
何が、いけなかったのだろう。話が長過ぎたのだろうか。
「て、徹夜で考えたのに……あんまりだわ」
がくっと床に崩れ落ちて、マリナはそっと涙を拭った。
でも、まだ諦めるには早い。きっと、明日こそは!
終
04.01