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朝方。
ベッドの上で目を覚ました刹那は、むくりと起き上がって暫しの間停止した。
数秒の間の後、ごしごしと目を擦ってみる。
その後窓の方を見ると、カーテンの隙間からは陽の光が差し込んでいた。
つまりは、もう朝と言うことだ。
そこでやっと時計を見ると、もういつもなら朝食を食べている時間だった。

「……?」

マリナはどうしたのだろう。
いつも彼女は刹那を優しく起こしてくれるのに。
少し考えた末、刹那はベッドから降りて、マリナの部屋に向かった。

鍵は掛かっていないと解かっている。
以前も、とても寒い夜があって、彼女の毛布の中に潜り込んだことがある。
その後も、「ね、ねぇ、刹那、今晩も良かったら入って来ていいのよ」なんてことを言われたけれど、あれから寒い夜は一度もなかったので「いや、結構だ」と遠慮しておいた。
そのとき、あからさまにがっかりして床に崩れ落ちたマリナのことを、刹那は知らない。

まぁ、それはさておき、今は彼女の様子が気になる。
そっと扉を開けて中に入ると、刹那はマリナが寝ているベッドへと向かった。
目覚ましをセットし忘れたのだろうか。彼女は未だすやすやと気持ち良さそうな寝息を立てて眠っていた。

「……」

彼女の寝顔を見詰めて、刹那は二、三度瞬きをした。
これは、どうしたものか。
起こさないと、刹那はいつまで経っても朝食が食べれない。
と言うことは、朝食を食べずに学校へ行かなくてはいけないと言うこと。それは、困る。
仕方なく、刹那はマリナを起こすことにした。
まず、そっと手を伸ばして小さく肩を揺すってみる。でも、起きる気配はない。
続いて、頬をむぎゅっと抓ってみた。すると、ぴく、と反応があってマリナが身じろいだ。

「う、うーん…刹那、ごめんなさい」
「……!?」

急に謝られてびっくりしたけれど、どうやら寝言らしい。どんな夢を見ているのやら。
とにかく、あともう少し。刹那は少し張り切って、今度は両方の頬をぎゅっと抓ってみた。

「シ、シーリン、私が…悪かったわ…」
「……」

一体どう言う経緯なのか、彼女は今度はシーリンに謝っている。
でも、やっぱり起きる気配はない。本当に、どうしたものか。
思わず腕組みをして、刹那は眉根を寄せた。

「マリナ、マリナ・イスマイール」

今度は、声に出して呼んでみる。でも、反応はない。
それに…。

「……」

何と言うか、彼女があんまり気持ち良さそうに眠っているので、何だか刹那までまた眠くなってしまった。

少し考えて、刹那はいそいそとベッドによじ登って、それからもぞもぞとマリナの布団に潜り込んだ。
思った通り、とても気持ち良い。ついうっかり目を閉じてしまうと、眠ってしまうまでは数分も掛からなかった。

数十分後、ようやく目を覚ましたマリナが色々な意味で大騒ぎすることになるのだけど。
それまでは、姉と弟、二人で仲良くくっついて安らかな眠りに就いていた。




05.17