SS
―刹那って、バカよね…。
「……っ!!!」
頭の中にマリナの声が聞こえて、刹那はがばっとベッドから起き上がった。
額には汗が浮き上がっているし、心なしか呼吸も乱れている。
(夢、か)
胸中で呟きを漏らして、刹那はベッドから軽やかに降りた。
自分の名前は、刹那・F・セイエイ。
大分前から、義理の姉のマリナ・イスマイールと一緒に住んでいる。
マリナは、ガンダムが美味しいと言ったり、この前などは電気も点いていない暗い部屋で、毅然、毅然とブツブツ呟いていたりと。
少々理解出来ないところもあるけれど、刹那には優しくしてくれる。
でも、そんなマリナに、この前思い切りバカだと言われてしまった。
今朝の夢は、その名残だ。
「………」
(バカ、か……)
授業中。
にっこりと笑顔を浮かべてそう言う彼女を思い出して、刹那はシャーペンを持つ手をぴたりと止めた。
思わず力を込め過ぎてしまい、シャーペンの芯がバキ、と音を立てて折れた。
(何だ、何がいけない…)
思い当たることを、自分なりに考えてみる。
この前、学校のテストの解答欄に全て「ガンダム」と記入したことを言っているのだろうか。
それとも、転校して来た初日の自己紹介で、「俺がガンダムだ」と言ったことを…?
お陰で、担任のロックオン・ストラトスにはガンダムバカだ、何て言われた。
でも、マリナがそんなこと知っているはずない。テストの解答用紙も見せていない。
結局理由は解からなかったけれど、バカと言われたならば、それを払拭するのみ。
今度のテストで百点取れば、マリナも見直してくれるに違いない。
―ありがとう、刹那。
―お休みなさい、刹那。
そうやって、優しい言葉を掛けてくれる彼女に、戻って欲しい。
刹那は改めてぎゅっとシャーペンを握り締めると、決意を固くした。
それにしても、彼女の言ったことがこんなに気になるなんて。
一体どうしてだろう。
「……?」
ひたすら首を傾げつつも、刹那は百点目指してもくもくとノートを取り続けた。
終
思いの他ショックだった刹那。