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酔狂
夜遅く、部屋に戻って来たアレルヤは、どことなく上機嫌に見えた。
知り合いが誕生会を開いてくれると言うので、アレルヤだけ出掛けて行ったのだ。ハレルヤも誘われていたのだけど、そう言う付き合いは鬱陶しいだけだ。ハレルヤの世界は、アレルヤが全てなのだ。そして、それ以外は興味がない。
そのアレルヤは、お祝いにでも貰ったのだろう。手にいくつものプレゼントの箱やら花やらを抱えていた。テーブルの上にその箱の山を置くと、彼はその中から一本のボトルを取って、ハレルヤの目の前に翳した。
「…?何だよ」
「誕生祝だよ、ハレルヤ」
「ああ?もう祝って貰ったんだろ」
「ぼくじゃないよ、ハレルヤ。きみのお祝いだよ」
「あ……?」
「一緒に二十歳になったんだから、一緒に飲もう」
殊更愉しそうにそう言われて、ハレルヤは仕方なく承諾した。
「美味しいかい?ハレルヤ」
ベッドに並んで腰を下ろすと、グラスに注いだ酒をアレルヤは執拗に勧めて来る。けれど、一口飲んだだけでもう十分だった。飲み慣れない、苦い味。
「よせよ、もういらねーよ」
「でも、これはハレルヤにって貰ったんだよ。スメラギさんにね」
「ああ、あの女か」
「折角、きみの分も貰ったんだから、少しは飲んでよ」
「いらねーって言って…」
再度拒絶しようとすると、アレルヤは徐にグラスを傾け、良い香りのするアルコールをそっと口に含んだ。そのままハレルヤの頬を両手で包み、唇を押し付けて来る。このまま、飲ませようとしているのだろう。
「ん…っ」
アレルヤの意図に気付くと、ハレルヤはゆっくりと唇を開いた。押し当てられたそこから、じわりと苦い酒が染み入って来る。アレルヤの舌が絡み合い、酒の苦い味とキスの甘さと、鼻に抜けるような良い香りが混じり合う。
ハレルヤがごくりと喉を鳴らして酒を飲み干すと、彼は次に深いキスに夢中になった。舌を絡めて舐り、軽く吸い上げ、酒の味がする口内を味わう。やがて、持ち上がった彼の手の平は、ハレルヤの肢体をゆっくりと撫で始めた。
「よせって、言ってんだろ。もういいだろ」
胸元を愛撫するように蠢く手を、ハレルヤは捕まえて引き離した。行為を阻止されたアレルヤは残念そうに吐息を吐いて、グラスをテーブルに置いた。
「お酒って苦いよね」
「ああ」
「でも、スメラギさんは、その内この苦さにも慣れるようなことを言ってたな」
「じゃあ、慣れるまで好きなだけ一人で飲んでろよ」
「……いやだよ」
淡々とした声が聞こえた直後、こちらに伸ばされた腕に押されて、ハレルヤはバランスを崩してベッドに背を付いた。
「…おい、アレルヤ?」
「ハレルヤ」
上に圧し掛かられ、グレイの目にじっと見詰められ、ハレルヤはようやく違和感に気付いた。
アレルヤは顔に出ないタイプなのか、気が付かなかった。迂闊だった。彼のグレイの目は既にとろりとしている。そうだ、彼は既に酔っているのだ。
「きみも一緒に酔おうよ」
何てことを楽しそうに言いながら、手を伸ばしてボトルごと掴み、ハレルヤの口元に押し付けて来る。
「こら、何して…、んっ…、むっ」
顔を逸らそうとすると、がしっと顎が凄い力で掴まれた。
目を見開いた途端、アレルヤがボトルを傾け、そこから苦い液体が一気に流れ込んで来た。
「んっ…っ!」
堪らずにハレルヤはむせ返り、口内からは冷たい酒が溢れて零れ落ちた。
「勿体無いよ」
「はっ…、無理に…飲ませようとするから、だろうが!」
咳き込みながらもアレルヤを睨みつけて凄んだのに、彼は気にする素振りもなく、ハレルヤの首筋まで伝っていた酒を生温い舌先で舐めた。
そのまま唇はゆっくりと肌に音を立てて吸い付きながら下へ降りて行く。鎖骨の辺りに差し掛かると、シャツに阻まれたからか、バリ、と音がして、前が割られた。部屋に響いた鈍い音に、ハレルヤは眉根を寄せる。
「なに、しやがる」
まだ呼吸の整わないままで静止の声を上げたが、アレルヤは構わずに顕になった胸の突起の吸い付いた。
「ん……っ」
ぴく、と肩が揺れ、思わず小さな声が出る。
反応しなければ良いのに、無理やり飲まされた酒のせいか、この部屋に充満しているその香りのせいか、何だかいつもと違う妙な気分だった。
そのまま施されるアレルヤの愛撫を、黙って受け入れる。ベルトが引き抜かれ、下衣が引き摺り下ろされると、両足がぐいっと左右に割られた。
ここまで来たらもうアレルヤは止まらない。拒絶する理由はないし、ハレルヤも彼の行為を受け入れてやりたい。少しだるくて気が進まないけれど、じっとしていればすぐに終わるだろう。
ぼんやりとしたまま横たわるハレルヤの耳元に、その時とくとくと妙な音が聞こえて来た。
「……?」
何気なく顔を上げると、アレルヤが先ほど手にしていたボトルを傾けて、指をたっぷりと潤しているのが見えた。零れ落ちた酒は、ハレルヤの腹の辺りに滴る。
「てめ、何やって…」
嫌な予感がして身を捩ると、咄嗟に体重を掛けて押さえ付けられる。
「あ…ッ、アレルヤ、っ…!」
問答無用で指先が後ろに押し込まれ、ハレルヤは喉を鳴らした。指先は申し訳程度に中を掻き混ぜ、そして強引に出て行く。続いて押し当てられた冷たい感触に、ハレルヤはぎくりと身を強張らせた。冷たいガラスの感触。それが何なのか悟ってひゅっと息を飲んだ直後。鋭い痛みが下肢に走った。
「くぅっ!!は、く…っ」
銜え込まされた痛みに堪らず浮き上がる腰を、アレルヤが抱き抱えて押さえ付ける。続いて、傾けられて流れ込んで来た液体の感触に、ハレルヤは恐怖した。
「ぁ……、う……っ」
「こっちから吸収すると酔い易いって言うんだけど…大丈夫?」
「……あ、ぁ……」
「あんまり大丈夫じゃないかな。ごめん、ハレルヤ…」
そんな言葉と同時に異物が引き抜かれ、代わりに指先が押し込まれる。
「く…ぅ!てめ…、冗談じゃ、な…っ」
震えた声を吐き出すハレルヤの目は、既にすっかりと濡れて、熱に侵されたように焦点が合っていない。
アレルヤが指を抜き差しする度、ぐちゅぐちゅと濡れた音が響き、ハレルヤは切れ切れに喘ぎを上げた。
「やっぱり凄いね、お酒は。きみが、こんなに…」
「誰のせいだ、アレル、ヤ…っ!」
後で覚えておけとか、目にもの見せてやるとか、色々な言葉がハレルヤの脳裏に浮かんだけれど、全て甘ったるい喘ぎに掏り返られて、どうすることも出来ない。
強烈な快楽に抗えないまま、ハレルヤは腰を震わせて欲望を吐き出した。
「ふぁ、っ、は…」
息つく間もなく、引き締まった腹に散った体液の上をアレルヤの手が這い回る。ぬる、と手の平が滑る感触に、ハレルヤは身を捩った。腰を浮かせたところでそのまま足が開かれ、アレルヤが身を割り入れる。
「んっ、…」
緩急した肢体を割って、アレルヤがゆっくりと侵入して来る。最後まで身を沈めると、アレルヤはそっと腰を使い始めた。
何度か律動を受け止め、じわりと滲み出した痺れに再び身を委ねたところで。不意にアレルヤは動きを止め、濡れたハレルヤの下腹部に再び手の平を滑らせた。
「ん、っ…」
圧迫されるような感覚が不快で、小さく吐息を漏らした、直後。
「ここに、入ってるのか…」
「……?」
耳に飛び込んで来た言葉の意味を悟る前に、アレルヤは手の平を押し付けていたその場所に、ぐうっと力を込めた。
「つ、……っっ!?」
悲鳴は声にならなかった。ぐっと強く腹の辺りを押され、ひくっと下肢が引き攣る。
「か、は…っ」
「……っ」
同時に跳ね上がった体はアレルヤを締め付け、彼は甘い吐息を漏らした。びく、と彼の腰が震えて、奥に欲望が叩き付けられるのを感じる。ようやく手元から力が抜け、ハレルヤは勝手に浮き上がって来た涙に濡れた目で、片割れを睨んだ。
「は、くっ…、てめぇ、ふざけんな、アレルヤ!」
「ごめん、ハレルヤ」
抗議の声を素通りして、アレルヤは優しい声で囁きを落とした。そのまま、彼は再びじっくりと弄るような行為を開始して、ハレルヤの体を抱き続けた。
その後。
ぐったりとして、糸が切れたように眠ってしまったアレルヤの重みを受け止めて、ハレルヤはもっとぐったりとしていた。無邪気な寝顔を見ていると、怒る気は削がれてしまうけれど。
何がお祝いだ。散々な誕生日だ。あんな危ないことを、よくも。ハレルヤの体が普通の人間と同じだったら、大変なことにもなり兼ねない。
アレルヤだけやたら満足した顔で眠っているのに、かなり腹が立つけれど、結局彼には甘い。
でも。
「これで明日、酔って覚えてないとか抜かしやがったら、許さねぇ」
息も絶え絶えにハレルヤは呟き、アレルヤを引き剥がすと、ふらつく肢体を引き摺ってバスルームに向かった。
終