greedily




「おい、アレルヤ?」

不意にその場に押し倒されて、背中に床の感触がした。
驚いて見上げると、真上から穏やかな顔でアレルヤがこちらを覗き込んでいた。同じ顔だけど、大分印象が違う。静かな色を湛えたグレイの目。
この目に宿る光と同じで、彼の持つ優しさや穏やかさはたまにハレルヤを酷く苛立たせ、幾度となく叱咤したり冷たく突き放して来たこともある。でも、それは全て、アレルヤ、彼の為だ。ハレルヤの大切な片割れの為。
その人物に今、何だか解からないが押し倒されている。
始めは、今までの仕返しでもするのかと思った。
けれど、片方のグレイの目に宿る熱に気付いてハッとした。咄嗟に押し返そうとした手首が掴まれて、きつく床に押さえ込まれる。

「決めたよ、ハレルヤ」
「……?」
「ぼくはもっと、強くなるから。きみのこともちゃんと守れるくらい」
「何だ、お前。どうした」

アレルヤが、強くなる。
それはずっとハレルヤの望みでもあったけれど、今ここで言うにしては不自然過ぎる言葉だ。何か意図があるのだろうか。
それに、先ほどから圧し掛かる体が熱くて、飲み込まれてしまいそうだ。

「だからきみを、ぼくのものにしたい」
「……!アレルヤ?!」

言いながら、彼がぐっと身を寄せる。無防備に開いた両足の間に体が割り込んで柔らかく動きを封じられ、ハレルヤは金の瞳を見開いた。

「おい、何血迷ってやがる、退けよ」
「嫌なのかい、ぼくにこうされるのは」
「嫌も何も…」
「無理にはしないよ、でも…」

そこまで言って、アレルヤはそっとハレルヤの首筋に唇を押し付けた。濡れた感触が肌の上を這い、眉根を寄せる。

「でも、ぼくはずっと、きみとこうしたかった」
「お前…本気で言ってやがるのか」
「そうだよ、ハレルヤ。ぼくはきみがいればいいから。きみの為に強くなりたい」

あくまで穏やかに告げながら、彼の手の平はシャツを掻き分けてハレルヤの肌の上を探り出した。

「おい、よせ…」
「嫌だ…」
「無理にはしねぇんだろ?」

揶揄するように言うと、アレルヤはこくんと首を縦に振る。

「しないよ、きみの嫌がることは」

そう言いながらも、愛撫の手は止まらない。きゅっと胸の突起を摘まれて、ハレルヤは小さく身じろいだ。

「アレルヤ、お前…」
「でも、嫌がってないよね、ハレルヤ」

敏感な反応を感じ取ったアレルヤが、口元を綻ばせる。

「止めろって、可笑しいだろ、こんなのは…」
「いいよ、可笑しくても」

ベルトに掛かった指先が片手で器用に金具を外す。
ふ、と首筋に掛かった熱い吐息に、ハレルヤはびくりと身を震わせた。



ジーンズの狭い隙間を縫って、アレルヤの手が下肢へと潜り込んでくる。滅茶苦茶に揉まれて乱暴に擦り上げられ、ハレルヤは奥歯を噛み締めた。

「我慢しなくていいのに」

アレルヤの声が落ちて来て、指先で無理矢理唇を割られる。

「はっ…、よ、せ…!」
「きみの声が聞きたいんだよ、もっと」

耳に馴染んだ、馴染み過ぎた声は、抵抗する気力を奪われる。そんな、同じ声を聞きたいだなんて、どうかしている、本当に。

「う、ぁ…!」

やがて、下衣が引き摺り下ろされ、ぐい、と後ろにまで捩じ込まれた指先に、引き締まった腰が大きく跳ねた。

「止めろ!いてぇだろうが!」
「暴れるからだよ、ハレルヤ」
「嘘吐くな!てめぇが下手なんだろ!」
「……そうじゃない」

ムキになったように彼は言って、内壁を乱暴に掻き回した。申し訳程度に潤っていた指先に擦られて、酷い痛みが走る。

「ぁ、あ…い、つ…っ!てめ、アレルヤ!覚えてやがれ!」

大きく足を開かれたこの状態で凄んでも、何の効果もない。

「解かったよ、よく覚えておくから」

アレルヤは冷たい目で一瞥すると、夢中になったようにハレルヤの中を探り出した。



「ん…っ!」

反応が変わったのは、アレルヤにすぐ伝わってしまった。自身の反応に驚愕し、見開かれた金色の目。

「ここが、いいんだ」

目を輝かせてそんなことを言い、彼は敏感な場所を中から容赦なく刺激しだした。叩くように指を抜き指しされ、あまりに乱暴な感覚にハレルヤは手足をばたつかせてもがいた。

「ひっ、あ!よ、せ!そんな、に…!!」

びくびくと引き攣る内股に舌を這わせていたアレルヤは、ハレルヤの反応に気付いて顔を上げた。

「ああ、後ろだけじゃ駄目なのかな」
「……っっ?!んっ、ああっ、あ…!」

次の瞬間、生温かい粘膜に包まれて、ハレルヤは悲鳴のような声を上げた。アレルヤが口内の奥までハレルヤのものを迎え入れ、舌を這わせる。慌てて髪の毛を掴んで引き剥がそうとしたけれど、連動するように中を突かれ、動きが奪われる。双方から刺激を受けては一たまりもない。

「ああ、ぁ…!う…っ!」

直後、逞しい肢体を引き攣らせ、掠れた声を上げてハレルヤは達した。

「はぁ、は…あ…」

無理矢理引きずり出された快感に眩暈がし、体が強張ったまま息を吐く。けれど、その四肢が緩急する前に、アレルヤが強引に割り入って来た。

「うあッ、あ…!!アレ、ルヤ…!」

止めろ、と言う言葉は声にならなかった。

「…何?ハレルヤ…」
「んぅ、く…っ、ん!」

降って来る優しい声が、残酷過ぎる言葉にも聞こえる。

「てめ、え…、あっ…!」

息も絶え絶えにきつい視線を送ると、見下ろすアレルヤは眩しいものでも見ているように目を細めた。

「きみが好きだよ、ハレルヤ」
「……っ、知ってるよ、んなこと…は…」

乱れる呼吸の合間に告げると、彼は口元を綻ばせ、それからゆっくりと身を屈めてハレルヤの唇を塞いだ。
ぐっと繋がりが深まって呻く唇にもお構いなく、捩じ込まれた舌が口内を這い回る。

「ふ、っぁ…」

ようやく解放されて掠れた声を上げると、ハレルヤは鋭い目で片割れを睨み付けた。

「やり過ぎ…だろ、お前…」
「まだ、これからだよ」
「……っ」
「きみにだけはね、どうしても加減出来ないんだ」

恐ろしい言葉をさらりと告げ、その言葉通り、アレルヤはゆっくりと律動を開始した。